保育士も不足
 「保育園落ちた 日本死ね」という国への不満をぶちまけた匿名ブログが注目され、参院選で各党が言及するなど関心を集めている待機児童問題。大都市圏ほどではないが、認可保育園などに入れない待機児童は高知県内でも発生しています。各党の公約には保育の受け皿拡大や保育士の処遇改善などが並びますが、待機児童解消の有効な手だてとなるのでしょうか―。高知市の状況から探りました。

 

 高知市に住む30代の女性は5月に新しい仕事が決まりました。1歳の長女は家の近くの認可保育園に預けたかったが、定員いっぱいの状態。求職中に利用していた認可外の託児所に通わざるを得ませんでした。保育料は月4万6,500円。「預かってくれる先がなければ仕事も決まらなかった。出費は仕方ない」
 有職、または求職中の親たちが子どもを預けようと申請しても、順番待ちで入園・入所できない待機児童。高知県内では高知市が例年大半を占め、2015年度4月で43人(ほか香美市4人)、2016年度4月で42人(すべて高知市)を数えました。

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△出典:高知新聞
 年度途中には育児休業がおわる人がいるため、待機児童はさらに増えます。高知市の場合、2015年度は4月の43人から10月には134人、2016年1月は247人と膨れ上がりました。
 2010年の国勢調査によると、6歳未満の子どもがいる高知県内世帯の共働き割合は55.5%。2000年に比べ4.3ポイント増えています。少子化にもかかわらず、保育園ニーズが高まる要因になっています。

産休や育休がおわればすぐに仕事に就きたい母親らが増えたことで「0~2歳児の保育需要が拡大」(高知市保育幼稚園課)しています。待機児童の大半もこの年齢層です。

なぜ受け入れられないのか。
 高知市によると、2015年度1月時点で保育園など認可施設に入れなかった理由の7割(173人)は定員オーバー。そして残りの3割(74人)は、施設の広さに余裕はあるものの保育士が足らない、というものです。

 認可保育園は、0歳児は3人、1~2歳児は6人に対して1人の保育士を置くことが国の基準で定められています。「あと1人保育士がいれば、もう少し園児を受け入れられるのにと思うが、見つからない。一年中知り合いに『保育士おらん?』と聞いてます」と、ある保育園長は、受け入れたくてもできない現状をため息交じりに話します。

 待機児童解消策として、高知市は国の事業を活用し、園舎の建て替えや耐震化の際に定員を増やしたり、0~2歳児の受け入れ先となる小規模保育所などの認可を進めたりしていますが、「需要の伸びに追い付いていない」(高知市保育幼稚園課)のが現状です。

 また、高知市では東日本大震災以降、津波浸水区域から外れる北部環状線沿いや市街地西部の人口が増加傾向にあります。ある民間保育園の理事長は「子育て世代が増えている地域に新しい保育園を―といっても、少子化の中、いつ園児が減るか分からない状況で新たな投資は難しい」と話します。
 各党の公約をよそに保育現場からは「保育士の給料を上げても保育士が急に増えるわけではない。少ないパイの取り合いになるのでは」「保育士全員を正規職員にしたいが、経営を考えると無理」との声も漏れます。
 保育行政に携わる自治体職員は言います。
 「非正規職員の多い保育士の労働条件を改善するには巨額の投資をするしかない。少子化は国家存続の危機として子育てに投資してもかまわないという国民の理解を得られるかどうか」
 「日本死ね」と言わなくて済むような処方箋が、簡単には見つからない現状があります。