2007_2.jpg
すっと 落ちる・・・

真っ白な手袋がふれただけで・・・・
すっと 
車掌室の窓が 落ちる・・・・

それは
この東海道線が
もうすぐ駅に着くのだ という 合図

若い車掌は
けだるい目をして車内を見やる

彼の横顔のほとんどは超立体マスクによって覆われている

なんて透明な 
まるで遠いアテネの音楽でも聴いているかのような 
あわいまなざし
何を見ているの
何を見ているの
底のないバケツの奥の宇宙
ああ 車掌は体調が悪いのかしら
ふらりと身体を揺らして
その窓から 身体を乗り出す

 魚類は南の海を目指して泳ぎ泳ぎしてまた帰ってくる

   車掌は西の地平を目指して走り走りしてまた帰ってくる


ふと
そんな車掌の背中に
初老の男性がいるのが 見えた
うっひっひ、って声まで聴こえる
ふざけた顔をした めがねのおじさん
小柄な手足で
くねくねと甘えて
車掌のまっすぐにくびれた背中に
しがみついていた

 ・・・おとうさん やめてください・・・・

 ・・・・いいぢゃないか クネクネクネ おとうさん さみしくて さァ・・・・・

 ・・・・おとうさん 仕事中ですから もうすぐ辻堂駅に 着くんですから・・・・

 ・・・・お前も立派になったもんだなァ クネクネクネ・・・・

 ・・・・重たいですから背中に登らないで下さいよ
      勤務中ですよ わたしは おまけに 
        花粉症で具合悪いんですよ わたしは・・・・・・


 ・・・・・おとうさんもう年取っちゃって クネクネクネ さみしくて さァ・・・・・・・

 ・・・・・おとうさん4年前に55歳で死んだじゃないですか まだ成仏できないんですか・・・・・

 ・・・・・老いては子に従え・・・・・・・

 ・・・・・わかってるじゃないですか。・・・・
    ・・・・・・あと、JRの車内では車掌にしたがって下さいよ・・・・・

 
 ・・・・・死んだふり、てっへっへっへ~★クネクネクネ。

 ・・・・・おとうさんは もう死んでます って 
       はい 辻堂 辻堂です・・・・・・・・・・




 あー、降りなく茶。